人生を豊かにしてくれるセカンドキャリアとしての日本語教師

セカンドキャリアとして日本語教師の道を選ぶか迷っているあなた。

セカンドキャリアとして日本語教育の道に入り、国内外で教師経験を積み、現在は海外で日本語を教えている「やすみん」に、ずばり「セカンドキャリアとしての日本語教師」について、「のえ」が聞きます!

 

日本語教師になったきっかけ

のえ
のえ

やすみんさんは日本語教師になる前は別の仕事をしていたんですよね?

やすみん
やすみん

インテリア関連の企業で会社員をしていました。

日本語教師になったのは30歳を過ぎてからです。 

 

のえ
のえ

差し支えなければ退職の理由を教えてくださいますか。

やすみん
やすみん

退職したのは、「燃え尽き症候群」かな。

今思えば、ちょっと鬱だったかもしれません。自分のキャパを超える規模の仕事を任されるようになって、ある日「もうだめだ」とバーンアウト。

 

のえ
のえ

退職して、日本語教師に?

やすみん
やすみん

はい。でも、すぐなったわけではないんです。

会社を辞めた後は、何をすればいいかわからず、自分を見つめなおすための時間が欲しくて社会人入学で再び大学へ行きました。

モラトリアムっていうやつです(笑)。

その時期に、やはりモラトリアムの延長で、ヨーロッパの大学に留学したんです。

そこでね、日本語を勉強する学生さんに初めて会いまして、日本語を教えてって言われて安請け合いしたんですよ。

でも、いざ教えようとすると何をどう教えていいのかさっぱりわからない。

日本語のテストなんかはもちろん全部答えはわかるんだけど、どうしてそうなるのかっていうのが全然答えられない……。

 

のえ
のえ

わかります。それ、日本人として結構ショックですよね。

やすみん
やすみん

ほんと、そう。

「日本人だからって、日本語がわかっているわけではない」っていうのは衝撃の体験でした。

 

のえ
のえ

日本の学校教育には「国語」という教科があっても「日本語」という教科はないですからね。「古文」は別にして「日本語」という言語を客観的に学ぶ機会が、学校教育の中で実はほとんどないんですよね。

 

やすみん
やすみん

まさしくその通り!

日本語学習者に日本語を教えられない自分に直面して、初めてそのことに気がつきました。

それで、その時に「あー日本語を勉強したい、私!」って思ったし、日本語を教える日本語教師という仕事にも興味を持ったんです。

 

のえ
のえ

なるほど。それがやすみんさんが日本語教師を目指すきっかけだったんですね!

 

 

日本語教師養成講座へ

のえ
のえ

やすみんさんは日本語教師養成講座に通って資格をとったんですよね。

やすみん
やすみん

はい。帰国後、大学を卒業すると同時に、日本語教師養成講座に通い始め

ました。

現場を早く経験したいと思ったからです。

日本語教師になるなら大学院へ行って修士の資格を取った方がいいよという人もいたんです。

でも、いきなり大学院へ行っても何を研究したらいいかさっぱりわからないし、それよりはまずは現場を早く経験したいと思って養成講座を選びました。 

 

のえ
のえ

どんな養成講座だったんですか。

やすみん
やすみん

私は日本語学校が運営している講座を選びました。

毎日通って半年間で420時間のカリキュラムをこなします。

修了後は、その日本語学校に採用される制度もありました。

もちろん、模擬授業などのテストを受けなければならないんですが。

養成講座にもいろいろあって、私が通ったのは、全日制の短期集中型の講座だったんですが、働きながら週末だけ教室に通うスタイルのところや、通信教育を活用できるところもあります。

 

のえ
のえ

やすみんさんの養成講座の経験はどうでしたか。

やすみん
やすみん

いやーとても楽しかったです!

養成講座に行き始めた頃は、正直言って、日本語教師になるという覚悟がまだそれほど固まっていなかったんですけどね。

でも日本語について勉強するということが本当に楽しくて、毎日「目から鱗」の連続で、半年間、ずっとワクワクしていました。

あ、そうだ。

「日本語教師養成講座の誤解あるある」ですけど、養成講座って日本語の教え方を学ぶところだと思ってる人、多いんじゃないでしょうか。

でもね、そうじゃないんですよ。

いや、もちろん教え方も学ぶんですけど、それよりも多くの時間、「日本語」について勉強します。

日本語の文法、日本語の歴史、音声、語彙など諸々ね。

それがとっても面白いし、学びが大きい。

たとえ日本語教師にならなくても、日本語教師養成講座で学んだことは人生を豊かにすると思いましたね。

 

のえ
のえ

とはいえ、やすみんさんは、その後、日本語教師になりましたよね^^

やすみん
やすみん

はい。会社も辞め、退路を断っていましたので(笑)。

のえ
のえ

具体的には養成講座修了後、就職活動はどのようにしたんですか。

やすみん
やすみん

私の場合は、修了後、運よく養成講座が付属している日本語学校に非常勤講師として採用されました。

 

のえ
のえ

そうなんですね^^。

日本語学校での仕事はどうでしたか。

やすみん
やすみん

はじめは週二日6コマほどの勤務だったと思います。

中級クラスの文法の授業をチームティーチングの一人として担当しました。

教師になりたての頃は、1回の授業に10時間くらい準備に時間をかけていましたね。

どんなに準備をしても不安だらけで、毎回大汗かいていました!(笑)。

先輩の先生に「新人がうまく授業できないのは当たり前。でも、とにかく‟熱心“でいてください」と言われたんですが、その言葉を励みに頑張ったことを覚えています。

だから、日本語教師として初めて手にしたお給料はすごく嬉しかったですね。

確か、5万円ほどだったと思います。

その日本語学校には2年ほど勤め、その後、海外で教えるようになりました。

 

のえ
のえ

やすみんさんの海外での日本語教師経験についてのお話は、コチラで!

 

 

セカンドキャリアであることのメリット・デメリット

 

のえ
のえ

やすみんさん自身、セカンドキャリアであることが今の仕事の強みになっていると感じる点はなんでしょうか。

やすみん
やすみん

営業職だった頃の経験が強みになっています。

私は日本語教師になる前は、企業の営業職だったんですが、その時に、その仕事(その商品)に関わる全ての人にとって「win」にならなければ、商品が売れても仕事が成功したとは言えない、と教えられました。

その視点は、日本語教師になっても活かされていると思います。

日本語教育って、教師と学習者だけで完結しているわけではないんです。

日本語教育を支えているいろいろな関係者がいます。

学校であったり、行政であったり、出資している企業であったり、また、学習者の家族であったりと、教師が直接目に触れない関係者も含めて、それぞれの立場から日本語教育に何かしら期待をしています。

学習者が授業に満足すれば大きな意味では「win」ですが、教師が自分の教室活動を支えている様々な立場の人の「win」に意識を向けることも大切だと思います。

特に、教室活動に困難が生じた場合に対応策や突破口が見出しやすいんじゃないかと思いますね。

 

のえ
のえ

なるほど。

前職の企業での営業経験が日本語教育の場に活かされているということですね。

やすみん
やすみん

そう思います。

日本語教師になってからも20年ほど経ちますが、いまだに私は「日本語教育」を「教育」というより「サービス」であり、学習者を「顧客」だと捉えているフシがあります。

でも、誠意をこめて顧客満足に勤めているのだからいいじゃないかと、心の中で開き直っています(笑)。

 

のえ
のえ

では、セカンドキャリアであることがデメリットであると感じている点はなにかありますか。

やすみん
やすみん

そうですね…。

正直言って、私はデメリットを感じていないんです^^!

私は器用な方ではないので、20代から日本語教育一筋であったら、他の世界に触れる機会がなく、日本語教育以外の経験や体験があまりできなかったかもしれません。

今は日本語教育にどっぷりつかっていることに迷いはないですし、日本語教師になる前の自分の人生が集約されて日本語教師という仕事に活かされていると感じていますので、私の場合はセカンドキャリアという選択でよかったと思っています。

 

セカンドキャリアに日本語教師を目指す方へのアドバイス

 

のえ
のえ

では、セカンドキャリアに日本語教師の仕事を検討している人へ、なにかアドバイスがありますか。

やすみん
やすみん

そうですねえ。では……

「日本語教師という仕事は、まちがいなく、これまでのあなたの経験が全て活かされる仕事です。そして、今後のあなたの人生を豊かにする仕事ですので、おすすめです!」と、本心から言いたいです。

でも、無責任にそうは言えない気持ちがあります。

 

のえ
のえ

それは、どうしてですか。

やすみん
やすみん

セカンドキャリアの「キャリア」をどのように考えているか、ということにもよるかと思うのです。

まず、収入のステップアップを考えている人には向かないと思います。

日本語教師で高収入を得られる人はかなり限られます。

本当にやりがいのある仕事なんですが、収入にはなかなか結び付きません。

 

 

日本語教師の「やりがい」と「収入」について 

 

のえ
のえ

日本語教師の仕事を「やりがい搾取」と呼ぶ人もいますよね。

残念ながら、日本語教師の収入アベレージが低いのは定説ですよね……。

やすみん
やすみん

はい、残念ながら、やりがいと収入が結びつかない面は否めないと思います。

現在のところ日本語教師には国家資格や免許などはありませんが、一般的に日本語教師の仕事をするには、

420時間の講習を受けるか、

日本語教育能力検定試験に合格するか、

日本語教育を大学の主専攻とするか、

といったプロセスが必要です。

でも、どれも、お金と時間と労力の投資が必要です。

ですので、素手から食い詰めた状況で日本語教師になるのは厳しいといえます。

そして、日本語教師の資格を得たと言ってもすぐに収入が得られるわけではなく、はじめは非常勤などのアルバイトから始めることが多いです。

つまり、日本語教師になろうと決めてから、日本語教師になって収入が安定するまで、それなりの時間がかかるのです。その間の生活費を確保しておかないと生活が破綻してしまいます。

私など、ほぼ食い詰めた状態からのスタートだったので、実家に戻り親に生活のサポートをお願いするしかありませんでした。

まだ親が現役だったので甘えられたし、私も若かったので勢いで乗り切れましたけど、いっときなど貯金が1000円切っていたこともありましたよ。

 

のえ
のえ

確かに、それは厳しいですね……。やすみんさん、頑張りましたね。

やすみん
やすみん

はい、まあそうなんですが……

セカンドキャリアで日本語教師の仕事を検討するときには、しっかりとしたプランが必要だと思います!

私の場合は幸運にも親に甘えられる立場であったからで、経済的には無謀な選択をしていたので、まったく威張れません。

ですので、セカンドキャリアで日本語教師の仕事を検討するときには、しっかりとしたプランが必要だと思います。

 

のえ
のえ

セカンドキャリアに限らず、日本語教師に経済的な悩みはついてまわる気がします。

やすみん
やすみん

日本語教師でもっとも高収入なのは大学の教授か自分で事業を起こして稼げている人です。

ただ、大学の教授になるには、博士号を持ち、研究実績、大学での業務経験等を併せ持った上での狭き門。

 

のえ
のえ

雇用されることを前提にすれば、日本語教師が収入を得る道は、高収入の順から、

大学教授、

准教授、

大学の専任講師、

大学の非常勤講師(ただし時間給)、

日本語学校の専任教師、

日本語学校の非常勤講師(時間給)

というのが一般的なところでしょうか。

 

やすみん
やすみん

そうですね。

准教授以上であれば、シングルインカムでも家族を養えますが、それ以下は、自分が生きていく分は何とか…という感じでしょうか。

もっとも日本語学校の非常勤講師だと、複数校を掛け持ちしないとそれも厳しいかもしれませんね。

あと、海外勤務も視野に入れ、国際交流基金の専門家として海外に派遣されれば、准教授ほどの収入が得られると思います。

ただし、任期は限られているので定期的に応募し続けなければなりません。

修士以上の有資格者であることと英語や日本語教育に関する試験、面接などをクリアしなければならないので、簡単ではありませんが。

 

のえ
のえ

修士号と言えば、大学機関に雇用される要件ともなっています。

となると、修士号を取った方がいいと思いますか

やすみん
やすみん

取れる環境なら取った方がいいと思います。

ただ、時間もコストもかかりますし、修士論文を書くには非常なエネルギーを要します。

それに、修士課程は「研究」ですから、論文は日本語教育に貢献する内容でなければなりません。

…というのは正論ですけど、本当にそのような気構えがなければ修士生活を乗り越えるのは大変だと思います。

その覚悟があるなら、修士号にも、博士号にも是非挑戦してほしいです。

これらの学位は間違いなく高収入へのチャンスをもたらすでしょうし。

 

のえ
のえ

日本語教師の求人はどうでしょうか。

やすみん
やすみん

現在のところ、高収入ポストにこだわらなければ、求人数は多いと思います。

地域の国際交流センターといったところの日本語教室は人手不足なくらいです。

ボランティアということがほとんどですが、採用要件は厳しくないですし、日本語教育を通して地域社会に貢献することができます。

それから、日本語学校の求人も常に目にします

また、近頃はオンラインでの授業をメインにした求人もあります。

あとは、求人に頼らなくても、自分で需要を生み出す方法を考えてもいいのではと思います。

 

のえ
のえ

自分で需要を生み出すとは?

やすみん
やすみん

雇用されるのではなく、自分で事業を起こすという考え方です。

これはきちんとマーケティングができて、日本語学習者のニーズにかなうサービスを供給できれば、なんの資格がなくても仕事を作ることができます。

現在はオンラインで展開できる方法もたくさんありますからね。

これからの時代の日本語教師は、雇用一本に頼らず自分で事業を起こす、そういった発想があった方がダイナミックに躍動できる気がします。

 

のえ
のえ

なるほど。

そのような意味でも、社会経験も人生経験も豊かなセカンドキャリアの人にとっては、自分の過去のキャリアを日本語教師としてのライフプランに活かすことができると言えそうですね。

 

まとめ

のえ
のえ

まとめると……

セカンドキャリアとして日本語教師の仕事を検討する場合、

  • 日本語教師の仕事はやりがいがあるが、単純に高収入を期待しての転職には不向き
  • 日本語教師として雇用されるには、一定の条件を満たしていなければならない
  • それには、時間・お金・労力の投資が必要
  • しかし、求人に頼らなくても自分で需要を生む方法を模索する道もアリ
  • 過去のキャリアは存分に活かせる

ということになるでしょうか。

 

やすみん
やすみん

はい。

日本語教師の仕事は、「やりがい」に満ちています。

そして、教師にとっても学びの宝庫です。

決して退屈はしませんから、日本語教師を検討している人は、収入と折り合いをつけつつ、ぜひ一歩踏み出してほしいと思います。

 

 

のえ
のえ

いかがでした?

私は、いわゆる「日本語教師プロパー」なので、やすみんさんの「セカンドキャリア日本語教師」のお話は、興味深いものばかり。

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