海外で日本語を教える -そこはセカンドキャリア日本語教師の力が発揮できる場-

日本語学習者の数は国内よりも海外の方がずっと多く、国内学習者の4倍以上。

日本語教師が活躍できる場所は当然海外にも!実際多くの日本人教師が海外で活動しています。

もしあなたが海外で日本語を教えたい!と思った時、どのような手段があると思いますか。

また、海外の現場ではどのような状況が待っているのでしょうか。そして、長く海外で日本語教師として活躍するにはどのような心構えが必要なのでしょうか。

海外で活動している日本語教師の一人で、日本よりも海外での日本語教師経験の長い「やすみん」に、「のえ」がいろいろと話を聞いてみます!

 

海外で日本語を教えるきっかけ 

 

のえ
のえ

やすみんさんは、どうして海外で日本語を教えたいと思ったんですか。

やすみん
やすみん

日本語教師になって1年ほどたったころ、

JICA の海外青年隊で日本語教師を募集していることを知って興味を持ったんです。

初めて「日本語学習者」に出会ったのが海外でした。

それがきっかけで日本語教師になったんですが、そのせいか、漠然といつかは海外で教えたいと思っていました。

国内の日本語学校で非常勤講師をして1年ほどたったころ、たまたま本屋で見た日本語教育関係の雑誌で、JICA海外協力隊(※当時は「青年海外協力隊」)で日本語教師を派遣していることを知って「ピン!」と来たんです。「そうだ、これだ」って。

…で、その1年後には中東の某国におりました。

 

 

のえ
のえ

やすみんさんが日本語教師になったきっかけと、セカンドキャリアとしての日本語教師についてのお話は、コチラで!

 

 

JICA 海外協力隊で日本語教師!

 

のえ
のえ

やすみんさんはJICA海外協力隊で派遣されたんですね!

やすみん
やすみん

そうなんです^^

 

のえ
のえ

JICA海外協力隊の枠組みで派遣される日本語教師ってどんな特徴があるんですか。

やすみん
やすみん

海外協力隊の派遣は、JICAの開発途上国への支援事業の一環で行われるものです。

まず派遣される国が、開発途上国に限られます。

それから、この事業はあくまでも海外協力隊を派遣する事業であり、日本語教師を派遣する事業ではありません。

そのため、隊員としての活動への成果は求められるものの、日本語教師としての活動成果が事業の中での評価対象となるわけではありません。

この2点が大きな特徴かなと思います。

 

のえ
のえ

なるほど!

日本語教師の活動に、何かJICA海外協力隊ならではということはありますか。

やすみん
やすみん

そうですね。

基本的に現場に入ってしまえば、日本語教師としての活動に大きな違いはありませんが、協力隊ならではという点は、その活動環境を自分で整える、ということでしょうか。

現地にいるJICAのスタッフが活動をサポートしてくれますが、JICAスタッフは日本語教育の専門家というわけではありませんし、派遣先の機関には日本語教育の事務方をやってくれる専属のスタッフがいることは稀です。

ですので、いろいろなことを教師が自分でしなければなりません。

たとえば、私の経験ですが、配属機関との折衝はもちろん、教室を確保したり、教材の手配をしたり、学習者を募集したり……そういえば、学習者を募集するのにポスターを作ってあちこちに貼りに行ったりもしましたっけ(笑)。

 

のえ
のえ

JICA海外協力隊の日本語教師活動で、何か困ったことはありますか。

やすみん
やすみん

そうですねぇ…不慣れなうちは、いろいろあったような^^

とにかく、現場では、多少大袈裟ですが、「自分で全部する」「自分で解決する」ってことなので、はじめはそのことを認識して自分で動けるようになるまで少し時間がかかりました

国内の日本語学校では、「与えられたカリキュラム、シラバス、時間割、教材、教室環境、学習者」に対応すればよかったのが、協力隊の現場では、そのほとんどすべてを自分で準備したり確認したりしなければならなかったので、…いやー、大変鍛えられました!

それから、困ったことというより、悩ましいことなのですが……。

協力隊の任期は2年となっており、協力隊の派遣サイクルとが派遣先の教育機関の学期のサイクルとずれることがまま起こるんです。

JICA海外協力隊の場合、前任者と後任者の任期が重なるとは限りません。

学期の途中で任期が終わってしまったり、前任と後任の派遣の間が空いてしまったりする場合の対応が悩ましかったですね。

 

のえ
のえ

やすみんさんにとって、JICA海外協力隊の日本語教師の魅力はなんでしょうか。

やすみん<br>
やすみん

なんといっても、協力隊の仲間がいることです!

派遣先機関に一人きりで活動していたとしても、助けが欲しい時に助けに来てくれます。

特に日本語教師としては、隊員の仲間が授業やイベントに来てくれて、学習者に(教師以外の)日本人との交流の機会をたくさん作れたことがとてもありがたかったですね。

それから、なかなか日本では会うことができない学習者に会えることですね!

たとえば、開発途上国の趣味で日本語を学んでいる学習者が日本に来られるチャンスはあまりありません。

そんな学習者に出会えたことは、幸せなことでした!

 

のえ
のえ

JICA海外協力隊への応募を検討している日本語教師の方へ、何かアドバイスはありますか。

やすみん
やすみん

どんなに人生や日本語教師の経験を積んでいても、海外での生活や日本語教育の現場では、きっと想定外のことが起こります。

そのすべてを楽しむつもりで、是非チャレンジしてほしいと思います!

JICA海外協力隊は募集の年齢層が広く、また、教師の経験年数や学位(修士以上)の条件のハードルが比較的低いと言えます。

ボランティアではありますが、生活のサポートはされており、派遣中にお金の心配はいりません

安全面でのサポートも細やかです。

海外での日本語教師経験の入り口としてはとてもいいんじゃないでしょうか。

 

やすみん
やすみん

JICA海外協力隊への応募に興味を持たれた方は、下のJICA海外協力隊のサイトにアクセスしてくださいね!
JICA 海外協力隊

 

 

「海外での日本語教師」の仕事を探す

 

海外で日本語教師として働くには、主に下記の方法があります。

・JICA 海外協力隊派遣

・国際交流基金の日本語専門家派遣

・国際交流基金「日本語パートナーズ」事業での日本語教師派遣

・海外日本語教育機関と提携している日本語学校や企業からの派遣

・海外日本語教育機関の直接採用

・民間の機関が斡旋しているインターンシップ

それぞれ採用条件や業務内容が異なりますので、よくご確認ください!

 

下記は参照サイトです。

JICA海外協力隊

国際交流基金 – 日本語専門家の海外派遣 (jpf.go.jp)

日本語パートナーズ | 国際交流基金アジアセンター (jfac.jp)

教師募集情報 | 公益社団法人日本語教育学会 (nkg.or.jp)

日本語教師海外求人情報 | 国際日本語研修協会 (ijec.or.jp)

PARTNER 国際キャリア総合情報サイト(jica.go.jp)

 

   

海外の日本語教育の現場

 

のえ
のえ

それやすみんさんの海外の日本語教育の実践経験についてお伺いします。
初めて海外に派遣された時のことを覚えていますか。

どうでしたか。

やすみん
やすみん

はい。初めはとまどいました。

というのも、日本で学ぶ日本語学習者と、海外で学ぶ学習者は全然違うんです。

初めて海外に派遣された時は、学習者の日本語に求めているものが国内の学習者と違うことに戸惑いました。

私が派遣されたのは、日本語を趣味や楽しみで学ぶ人たちがほとんどのところだったのですが、それまで私が勤務していた国内の日本語学校ではそのような学習者はほとんどいなかったので、正直、ちょっと面くらいました。

ですから、国内の日本語学校と同じ方法で進めようとしても、うまくいきません。

強引に自分のやり方だけを押し付けると学習者との信頼関係は築けません。

…どうすればうまくいくのか、はじめは試行錯誤ばかりでした。

 

のえ
のえ

海外とは異なり、日本にいる学習者は日本語を習得することが生活の質に直結するので、嫌でも学習はマストですし、到達目標も高くなりますよね。

やすみん
やすみん

ですよね!

でもね、世界の学習者は「趣味」で日本語を勉強する人の方が実は多いし、初級の学習だけで満足して学習をやめる人が多いということにもそのうち気が付きました。

 

のえ
のえ

そういった趣味の日本語学習者と、日本語の習得を目標とする学習者とでは、教師の対応も異なってきますよね?

やすみん
やすみん

そうですね。まず、発想を変えることが必要と思います。

趣味の学習者に、日本で教えていたことと同じようにしようとしては空回りするんですよね。

逆に、日本の学習者に海外の趣味の学習者にしていたように対応しても、これまた空回りします。

苦い経験もありますが、それはまた別の機会に……(笑)。

 

趣味の日本語学習者って?

 

のえ
のえ

ところで、趣味の日本語学習者、とは、実際にはどういった学習者なのでしょうか。

やすみん
やすみん

はい。一言で趣味の学習者と言っても、千差万別なのです!

日本のアニメが世界に受け入れられていることから、アニメ好きの人が多いと思われがちですが、実際のところそればかりではないですね。

アニメが入口だという人が多いのも事実とはいえ、茶道や生け花などの伝統文化や、武道、日本の歴史や経済、生活習慣の違いに興味があったりと、本当にいろいろです。

「日本」というコンテンツに対して何かしらの個人的なきっかけがあって、一歩踏み込んで「もっと知りたい」という人が日本語の勉強をしようと思い立った…そういった様子が多くの学習者に見られます。

アンケートを取ると「既知の言語とは全く異なる言語への関心(が日本語学習動機)」と答える人もいます。日本語学習を通して異文化に触れたいという期待も感じます。

 

のえ
のえ

そのようないろいろな学習者の期待に応えるのは大変ですね。

やすみん
やすみん

そうですね。でも、すべては工夫次第です!

教室での授業は、全ての学習者の関心や期待にそえるようにカスタマイズすることはできません。

でも、学習者が共有する時空間を意味あるものとするために、なにを、どのように教えるかという点を工夫することで、教師の誠意を示すことはできると思います。

 

のえ
のえ

なるほど。なんだか難しそうな話になってきました^^

やすみん
やすみん

確かに(笑)。「言うは易し、行うは難し」です、まったく。

でも、硬く考えたら難しいのですが、ひたすらレベルアップを目指す日本語教育から教師も解放されると考えたら、楽しい現場かもしれません。

 

そこはセカンドキャリア日本語教師の力が発揮できる場

 

創意工夫や柔軟な発想が求められるのだとしたら、社会経験のあるセカンドキャリア日本語教師が力を発揮しやすい現場と言えるのでは?

やすみん
やすみん

そうかもしれません。

実際に、豊かな人生経験を持つ日本語教師が学習者のモチベーションをアップさせています

自分のことを棚に上げちゃいますが、以前、海外の現場で、学習者から絶大な信頼と人気を誇る先生がいらっしゃいました。

その方は日本の企業を定年退職してから日本語教師になられたので日本語教師の経験は少なかったんです。

でも、授業には豊かな人生経験とお人柄が溢れていました。

学習者はみんなその先生が大好きで、それが日本語学習のモチベーションにもつながっていました。

 

のえ
のえ

なるほど!

趣味で日本語を学びたい学習者に日本語を教えるときには、セカンドキャリアの日本語教師の過去の経験が大いに生かせそうですね!

 

 

海外派遣後の日本語教師の進路

日本から派遣される日本語教師には任期や契約期間があり期限付きです。

つまり、いずれ日本へ帰国することが前提の活動となります。

帰国後の日本語教師の進路について、「やすみん」は、どうしたのでしょうか。

 

のえ
のえ

JICA海外協力隊の派遣から日本へ帰国した後の、やすみんさんの進路は?

やすみん
やすみん

また海外で教えたくて、再びJICAの海外協力隊に応募しました。

 

のえ
のえ

帰国後すぐまた出発したんですか。

やすみん
やすみん

いいえ。半年ほど日本にいました。

JICA海外協力隊の公募は年2回です。

公募後選考と派遣前研修(*JICAでは「訓練」という)を経て派遣されます。

つまり、1公募が出るまで待つ→2公募が出たら応募→3選考→4派遣前研修→5派遣、というプロセスがあり、最短でも6か月はかかります。

派遣元はJICAばかりとは限らないですが、私は20年近く、このような帰国してはまた派遣案件に応募するといった海外派遣生活を続けています。

 

のえ
のえ

そうですか!…それで、

派遣されるまでの間の、日本での仕事や収入はどうしていたんですか。

やすみん
やすみん

実をいうと、なかなか厳しいものがありまして…

私の場合は、帰国後の進路は海外への派遣案件に応募することを考えていたので、長期の仕事には就けず、都合の良い短期の仕事も簡単には見つからず、結果としてほぼ無収入で過ごしていました。

…かといって海外派遣が保証されているわけでもないので、派遣と派遣の間の収入確保は、まいど頭のいたい問題です。

 

のえ
のえ

海外での仕事中に、日本からの派遣のための次の求職活動をするのは、簡単なことではなさそうですね。

 

やすみん
やすみん

はい。次の派遣までの間に、空白期間ができることを想定しておいたほうがよいですね。

何度かの海外派遣を経験していますが、派遣と派遣の間の「空白期間」については、だんだん仕事面でも収入面でも少しずつ賢く対応できるようになりました。

海外での日本語教師活動を継続するには、仕事面・収入面のリスクはありますが、あらかじめリスクを想定しておくことで対応できることもあります。

 

 

まとめ

 

のえ
のえ

それでは、最後に一言お願いします。

やすみん
やすみん

みなさん、「ノーチャレンジ、ノーゲイン」です!(笑)。

リスクはあっても、海外での生活や仕事から得られる学びや喜びも大きいと思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

不安があるなら、はじめは、長期ではなくて短期の案件から始めたらいいかもしれませんね!

 

 

のえ
のえ

いかがでした?

私は、いわゆる「日本語教師プロパー」。しかも、現在は日本語教師以外の仕事をしているので、やすみんさんの「海外で日本語を教える」お話は、興味深いものばかり。

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